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2005年 05月 06日
ここ数日、いろいろ考えなくてはいけないことがなかなかまとまらない。集中力に欠ける状態が続いている。気分転換に友人に借りた桂文治のCDをきいてみる。これがかなりよい。
落語といえば、最近ドラマでクドカンが浅草を舞台に「タイガー&ドラゴン」をやっているのを見た。テンポはあるけど手法としての「本歌取り+劇中劇」は大して新しくもなく、川上音二郎の時代にすでにあったものを現代に置き換えているに過ぎない。そして、おもしろいと思ったテンポも何回か見るうちに一定の法則を持ったリズムボックスのような感覚に軽い気だるさを感じる様になる。これが生身のパーカッショニストがライブで作り出すようなリズムだったらどんなだろう。 で、文治の落語はというと、このリズムとテンポが実に小気味よいのだ。彼は本当に日本のことばを大事にした噺家の1人だ。近ごろ文科省がしきりに言っている「美しい日本語」とは全くもって別物で、彼の言い回しを使えば「様子のいい日本語」というところだろう。演目は「掛け取り」という古典、大晦日に長屋の夫婦が借金取りをうまく追い返すお話し。江戸の言葉に現代の感覚も少しだけ交えて、きちんと周到に考えられた「間」の上に放たれて行く「言葉」。完璧な話藝だ。 実は一度、生前の彼の高座を観た事がある。初めて落語をライブで見たのもその時。浅草演芸ホールの午後の部の「主任」が彼だった。彼は高座に上がると、前の演目がおしてしまって、トリを務める自分の持ち時間が無いということを客に詫びた。「でもまあ時間まで、せっかく来て下すってンでっ、マクラだけ」といって、「恰好良い」ではなく「様子がいい」が言葉としては正しいという噺をした。短い時間に説教臭くなく彼の持論を客の笑いの中に滑り込ませる。最後に「明日もやってますから」。それから数ヶ月して彼の訃報が新聞に載った。サワリもサゲも聞けないままだ。「なんだね、文治って奴ぁ、サゲねぇまんま昇っちまいやがった…。」
by yamazakura244
| 2005-05-06 17:55
| キキモノ
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